心と心で会話するということ
仕事柄、私は普段から大勢の人と同時に会話する機会が多い。あちこちから呼ばれ、飛び交う会話、次から次へ変わる話題、そして異なる言語。仕事においてはなんとか対処するのですが、正直とても苦手。そういう状況の中にいると、とにかく心が落ち着かず、誰に焦点を合わせて会話を絞ればよいのか分からなくなるから。とはいえ、「カクテルパーティー効果」という心理学的ワードがあるように、たとえどんなに大勢の中にいようと、自分にとって何か重要な会話は不思議と耳に入ってくる。何も入ってこないという場合は、恐らく、聞きたくないか、自分にとってそれほど重要な会話はされていないということ。
私はCAという仕事を通して大勢のお客様と、そしてセラピーやコーチングでは主に一人のクライアントと向き合い、その一人一人がとる態度やささいな言葉から、『本当に伝えたいことは何か』をくみ取るスキルを常に必要とされています。航空機内においては、パブリックスペースということもあり、大体のことは、自分の中に蓄積された経験というマニュアルを使えば、そうじっくりその声を聞きとることに時間を使わなくても、状況に応じた適切な対処が出来る自信がありますが、それでも何か余程言いたいことがある方の場合は別で(つまりクレームなのですが)、そんなときは、話が延々と続き・・・。そして対応を間違えると火が付いたかのようにその火が消えるまでは話が終わらず。とはいっても、いかなる理由であったとしても、限られた人員と時間の中で、終わりのない怒りを納めていただくために一乗務員が割ける時間には限度があり、業務を遂行させるために、機内責任者の判断で、どこかで強制的に会話を止めないといけなくなる場合も多々。最後まで納得されずに機内を後にされるという方もいらっしゃいますが、まぁ、そういうお客様は、地上でもクレームを出されるので恐らくどこかの時点で・・・。(笑)若い頃はその対応にとても苦悩したのですが、今は自分が必要だと判断した場合には、時間が許す限り、その方が納得されるまでは最後まで「聴く」という対応だけはとるよう努めています。
セラピーやコーチングは基本1体1。私の場合、セラピーワークに関して言えば、どこかコンサル的な側面もあるため「情報を与える」ということに焦点を置いています。セッションの中で用いたものから導きだした統計的なある種の解決策をクライアントに提示し、それをもってどうするかの最終的な判断はクライアントに委ねるというケースが多く、しっかり聴くという点においては必須なのですが、自分が『傾聴』(しっかり聴いて、本質を理解する)している状態であることに、それほど意識を向ける必要がなく・・・。ですがコーチングに関しては、セッションでの会話の中から、そのクライアントに隠されている『本音』の部分を用心深く聞き取る力が要求され、それをもって効果的な質問をなげかけなければならないので、『傾聴力』というスキルがとても大切になります。最近、その『傾聴』が出来ている状態とはどういうことなのかについて良く考えています。目の前にいるクライアントと向き合いセッションをする際、『頭』に意識を置いた状態で話を聴き、そこから質問を投げかけているうちは、クライアントの話に焦点がしっかりあっていないという状態、つまりそれが『傾聴』できていないという状態で、出来ている時とはどんな状態なのかというと、それは『こころ』に意識が向き、そこから話を聴いているという感覚、そのような感覚をもってセッションしている状態の時なのではないかということ。親しい関係であればそれほど意識しなくても出来ることかもしれませんが、心と心で会話をするということは、簡単なようで、実は意識するととても難しい。
機内でお客様と話す時でも、セラピーやコーチングのセッションでクライアントと話をする時でも、心と心で会話をしていると感じるときには、不思議と何か温かい思いが心の中に満ち、「解っている」というような感覚が芽生えます。一方的な感じではなく、共に創るというような、そんな世界観。とはいえ、心と心でする会話も、度が過ぎれば慣れあい、行き過ぎると依存関係に発展することも・・・。それでも意識して常にお互いのバランスを保つよう心がけることが出来たのなら、きっと普段の生活の中でもより良い人間関係を築いていくための大きな力になることでしょう。
2匹で遊ぶ、仲の良いリス💞
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